October 1, 2023

フィリピン流 年金問題

フィリピンにも年金の問題はあり、内容はひょっとすると日本国内の年金問題よりも深刻そうです。

被雇用者ではない自営業からの年金徴収や国の財源負担など様々な問題があり、調査機関によると各国の年金制度の良し悪しを比べた場合にフィリピンはかなり低い順位となってしまったようです。

いったいどんな問題なのか?確認してみてください。

以下、NNAより抜粋

年金受給、2割どまり 正規雇用少なく、制度に課題も

フィリピンで約760万人いる60歳以上を対象とした公的年金の受給率が、約2割にとどまっている。公務員や大企業などの正規雇用者のみが事実上の年金の対象者となっているためで、経済成長に伴う格差を際立たせている。加入者が少ないという問題だけでなく、管理体制や高すぎる運用コストといった年金制度自体が抱える課題も指摘されている。

フィリピンの年金制度は主に、民間の正規雇用者や自営業者が強制加入となる社会保険機関(SSS)と、公務員向けの公務員保険機関(GSIS)がある。どちらも加入者の所得に応じて一定額が給付される。SSSの保険料は2019年1月以降、標準報酬月額の12%。加入期間が最低10年間であることが受給要件となる。

フィリピン統計庁(PSA)が昨年発表したデータによると、SSSとGSISによる年金受給率は14年以降、20%前後で推移している。17年の受給率は19.6%で、受取額の平均はSSSが月5,123ペソ(約1万1,000円)、GSISが1万8,525ペソだった。

フィリピンの非政府組織(NGO)などは、加入率自体が3割弱にとどまるため、受給者数も必然的に少なくなると指摘し「向こう数十年で構図が劇的に変わることはない」との見通しを示す。

露天商やトライシクル(三輪タクシー)運転手といった、公的な雇用契約のないセクターで働く人が過半数を占めていることが大きな要因だ。国際労働機関(ILO)によると、このセクターが占める割合は全体の約63%に上り、原則として任意加入となる年金の保険料を負担できるほどの所得がないことも一因として挙げられる。

定年退職後に向けた貯蓄への意識も薄い。フィリピン中央銀行のジョクノ総裁は、カナダの生命保険大手の調査を引用し「国民は定年後の貯蓄を十分に備えていない傾向がある」と指摘。貯蓄額は平均で月額給与の3.6カ月分と、調査対象のアジア8カ国・地域の平均貯蓄額である2.9年分を大幅に下回り、最下位だったという。

年金を受給できない高齢者は生活費や医療費の多くを自己負担で賄わなければならないが、親族や子どもが年配者の世話をするといった伝統的価値観も貯蓄の少なさに影響していると考えられる。

SSSの問題を指摘する声もある。年金の財源は労使の保険料のみで賄われており、国庫による負担はない。納付が少ないために、拠出額に対して運用コストが膨らんでいる実態がある。米コンサルティング大手マーサーが各国の年金制度を比較検証した報告書の20年版で、フィリピンは39カ国・地域中36位。政府による規制、管理体制、運用コストを図る「健全性」の項目で最下位となった。マーサーは「年金制度の対象者を拡大し、貧困層の高齢者に対する支援を強化することが鍵になる」と指摘した。

社会福祉開発省は、SSSなどの公的年金でカバーされない貧困層の高齢者に年金を追加支給する事業を実施している。対象者は60歳以上の17%を占めるが、支給額は月500ペソと低く、給付遅延も度々指摘されてきた。また来年度予算の削減で、9万人余りの給付が見送られる。新型コロナウイルスで打撃を受ける高齢者も多い中、下院議員からは支給額を月1,000ペソに引き上げるよう求める声も上がっている。