March 26, 2023

フィリピン不動産投資を徹底解説

2021年、新型コロナウイルスの猛威に世界経済が停滞し、日本も例外なく大きな影響を受けているこの時期からさかのぼること10年、日本とりわけ東北地方では東日本大震災と津波による未曽有の被害に見舞われました。震災のダメージから今も完全には冷めやらぬところですが、2011年当時、震災をきっかけに一つのトレンドが生まれたと筆者は考えています。それは海外不動産投資と移住です。
地震大国である日本ではまた大規模な震災に見舞われないとは言いきれず、日本以外の国での資産形成や居住権というものの重要性を認識し、挑戦する先駆者的な不動産投資家がこれまでになく増加したことを記憶しています。筆者が7年以上の年月を費やして不動産業を行ってきた東南アジアのフィリピンという島国もそのような投資対象となった国の一つです。
いわゆる新興国と言われる東南アジアの国々は先進諸外国と比べ安価な不動産価格と日本からの地理的な距離、居住権の取得難易度の低さから当時特に注目された投資先でした。筆者は特にそのような国々に先駆けて投資してきた先駆者たちの不動産を直に現地で管理(不動産管理:Property Management)を行い、現地で投資物件の収益化のみでなく物件にまつわる様々なトラブルに対処してきた知見から他とは違う圧倒的な「ミクロ」な実務経験をもとに海外不動産投資のトレンドが薄まりつつある今も自信をもってフィリピン不動産投資をお勧めしています。
声高に騙された、失敗したと語る先駆者投資家たちの身に何が起きたのか、現地の実務者であるからこそ理解できることがあり見える景色が違います。今回はそんなフィリピン不動産投資を徹底解説していきたいと思います。

<フィリピン不動産注目ポイント>
1) 外貨ポートフォリオの拡充、外貨収益の獲得
2) インカムのインフレーション
3) インフレへのリスクヘッジ
4) キャピタルゲイン
5) 安価な物件価格
6) 所有権の確保、権利保全
7) 地理的な利便性
8) 移住にも適した温暖な気候

フィリピン不動産投資を徹底解説 目次

1.フィリピンで不動産を所有する前に知っておくべき基礎知識

そもそも不動産投資を始めるにあたり不動産所有権を取得することができるのかは大きなカギとなります。国や地域によっては現地人にしか不動産の所有を認めていないケースがあり、その時点で外国人としてその国の不動産に投資することは断念せざるを得ません。不動産投資においてその物件や土地の所有権が取得できるかどうかはどんな利回りであったり、好立地商品あるいはキャピタルゲインが望める物件であるかに関わらず最重要であり、所有権が取得できない場合はその国では投資すべきではないと筆者は考えています。
外国人が保有できないので、その国で法人を設立して現地法人として所有しようとするパターンも散見されますが、概ね不動産の外国人所有を禁じている国は外国人による法人設立にも何かしらの規制を敷いているケースが多く、あくまで間接的にしか不動産を所有できないということになります。日本は不動産の保有において土地も建物も全て外国人に所有権を認めていますが、これはかなり珍しいケースだと思います。
特に東南アジア諸国のように今まさに経済の成長を遂げようとしている国々では少なからず外国人における不動産所有の規制があることが一般的です。フィリピンではフィリピン人または議決権の60%以上がフィリピン人にある内国法人のみ土地の保有が可能ですが、コンドミニアムのようないわゆる区分分譲スタイルの不動産では一定数の外国人に対して所有権を認め、Certificate Condominium of Title(CCT)という登記簿謄本を国が発行します

参考動画:【登記簿ってないの?】

1-1).外国人がフィリピンで不動産を所有できるか!?

フィリピン不動産における外国人の規制は大きく二つあり、前出の土地保有に関する規制のほかコンドミニアムの所有者の比率が全体で60(フィリピン国籍):40(外国国籍)でなければなりません。これらの規制の統括は権利書CCTの発行元でもあるLRA(Land Registry Authority)の各地方事務局ともいえるRegistry of Deed(RD)が管轄しますが、実際には全ての分譲式の物件が60:40の比率になっているか常に観察することは困難なため、各コンドミニアムの管理組合(Condominium Association)が実質管理を行っています。日本同様にコンドミニアムの各住戸のオーナーはそのビルのAssociation (組合)に加入することが義務付けられ組合員全員でCondominium Associationを組成します。組合は非営利法人の形式をとりますがフィリピン内国法人は60%以上の議決をフィリピン人が持つことが求められます。故にコンドミニアムの所有権比率が必然的に60:40に抑えられなければならないのです。

1-2).気になる個人属性での土地保有

既にふれたようにフィリピンでは外国人による土地の所有が認められておりません。これは憲法上の規定でありそれ故にフィリピンにおいては非常に重要な決まりであるといえます。一方でフィリピン人は土地の保有が認められており、ここでいうフィリピン人というのはフィリピン個人(国籍がフィリピン人、永住権保有している外国人は不可)またはフィリピン内国法人のことを言います。

1-3).法人ならば土地の保有が可能!?

先述の通りフィリピン法人であれば土地の保有は可能ですがフィリピン人個人が購入する場合と異なり注意が必要です。例えば同じフィリピン法人と言っても外国資本の法人は土地の購入が認められません。たとえその法人がフィリピン内に存在する法人だとしても外国法人である以上認められておりません。そもそもフィリピンでは内国法人の設立自体にも規制があり、株式議決権の60%以上がフィリピン人であることが求められます。
これは業種により異なりますが、一般的なフィリピン内国法人は最低60%以上の株主議決が求められます。一方でフィリピン国内に在籍する外国法人、例えば大企業のフィリピン支店などですが、これは決められた額面の資本金の積み増しをすることで設立は可能です。これにより法人の株主議決権を100%保有することは可能ですが、「フィリピンに居住する外国法人」つまり外国人とみなされ、土地の取得はNGです。

参考動画:外国人に土地が保有できない!?

1-4).不動産分野におけるフィリピン国内の業法

日本で不動産業法と言えばもちろん宅建業法です。まず民法があり、さらに不動産(宅地)取引を細かく規定した宅建という資格があります。宅建主任者のいない不動産会社は基本的に不動産取引ができません。その他、分譲マンションでは区分所有法があったり、入居者とのもめごとになりやすい退去時チェックと原状回復作業においては国土交通省がガイドラインを出し、トラブル防止策がとられています。
フィリピンにももちろん民法はありますし、不動産取引を監督する省庁(HLURB:Housing and Land Use Regulation Board)はあるもののその多くは土地活用や不動産開発会社(デベロッパー)の規定を制定しており、民間レベルの取引(賃貸など)に関する細かい規定があるわけではありません。宅建士にあたるものとしては、国家ライセンスとして不動産ブローカーライセンスがあります。近年、ライセンス取得要件として4年制大学での専門の教育課程などが制定されました。ですが一般にブローカーの取引を取り締まる基準となる法制度があるわけではなく、一個人がライセンスが無い状態で不動産の斡旋などしてもいても取り締まる手段がありません。
外国人の唯一の投資対象となるコンドミニアムにおいても各コンドの管理組合(Owners Associations)が独自のルールを制定しています。分譲マンションで最ももめごとになりやすい「専有部」と「共有部」の規定が各コンドによって違う上、統一された解釈がありません。日本の区分所有法になれた不動産投資家の方が度肝を抜かれる決定が行われる場合もあります。

1-5).知っておくべきコンドミニアム投資における所有権や借地権

コンドの所有権に関しては先述の通りで、建物内の所有比率が60:40である限りは外国人でも所有権CCTが取得可能です。一方で、土地保有が外国人は禁じられているため日本で言うところの建物に土地が付帯しているべきという概念はフィリピンでは通用しません。
60:40の比率でフィリピン人と外国人がオーナーとなり、Condominium Association(管理組合)が組成されます。ここで思い出してほしいのはフィリピン国内の法人の外国人比率も60:40で、フィリピン内国法人は土地の保有ができるということ。コンドの所有者比率と法人の株主議決比率は実はバラバラなようでつながっています。外資規制上、管理組合は最大比率は60:40=フィリピン内国法人=土地の保有が可能、そうコンドの立地する土地の保有者はCondominium Association管理組合なのです。もともとはもちろん、国内のデベロッパーが用地取得し、建設を行いますのでデベロッパーの所有物ですが建物竣工後、ある一定数のお部屋の引き渡し完了後からは管理組合に土地の所有権が引き継がれるようになっています。
それではデベロッパーはやすやすと購入者たち(管理組合)に土地を譲り渡すのか?これは実はもっと面白い、なるほどなという事実がありますので別の記事で深堀したいと思います。

2.フィリピン不動産に投資すべき魅力の数々

さてここまでフィリピン不動産の基礎知識、というにはかなり専門的な内容も多かったですが、ここからはフィリピン不動産の投資の魅力についてご説明いたします。この点においては日本でフィリピン不動産、特にプレセール不動産の販売を行っている多くの業者さんが細かく説明している通りだと思いますが、私的視点も加えながら説明していきたいと思います。

2-1).世界トップ10クラスの人口とボーナス期

フィリピンが同じ東南アジア新興国の中でも注目されるポイントはやはり経済成長率(GDP%)と人口ボーナス期を上げるべきでしょう。GDP%はその国の経済成長を表すので不動産に関わらずあらゆる分野においてフィリピンが投資対象として注目される要因です。さらに人口はGDP%をさらに底上げする大きな要因であると考えられ、特に不動産においてはそもそも人口が増えると住む家が単純に必要になるという観点からも明らかです。2015年の国勢調査で人口が1億人を上回り約1億1千万人に到達、毎年5年ごとに国勢調査は行われますので2020年のコロナ下でも調査は実施され現在(2月20日2021年)はその結果待ちです。実は日本とフィリピンは総人口数が近く世界の人口ランキングでは10位日本、11位フィリピンです。2020年の国勢調査の結果、この順位が逆転する可能性もあります。

2-2).要注意!利回りについてはしっかりとした理解を

フィリピン不動産とりわけコンドミニアムの利回りには注意が必要です。なぜなら多くの人が購入してしまうプレセールというデベロッパーからの新築案件では、新興国であるにもかかわらずとても目の当てられない利回りまで下がっているからです。原因は簡単でデベロッパーやプレセール販売業者が購入者の利回り度外視の価格設定で販売しているからです。
通常フィリピンの賃貸市場は堅調で賃料はコロナのような特殊事情を除けば年間5%前後で上昇していました。ですが新築プレセールの販売価格がデベロッパーの値付け権限により好き放題高い価格になり、収益還元に基づいた価格設定が一切なされていないためです。またプレセールの販売業者もミスリードで新興国の投資はあくまでキャピタルゲインといったようなセールス文句を目にしますがそれは誤りです。通常、不動産投資では収益(インカム)に基づいた収益還元法でその物件の価格を割り戻すといった不動産学問が既に確立されています。+αで経済状況の良し悪しが価格を吊り上げる(または下げる)ことはありますがインカムに基づかないキャピタルの予想などありえないのです。
この点はさらに細かく解説していきますので他の記事を参考にしてください。Youtubeでフィリピン不動産の徹底解説も行っています。

3.メリットとデメリット、その本質を考えてみる

フィリピン不動産に関わらず投資商品にはリスクとそれに見合ったリターンというものが存在すると考えています。よくメリット、デメリットという議論になりがちなのですが、デメリット=投資する上でのリスク、メリット=リスクを理解した上で得られる可能性のあるリターンということが言えると思います。リスクを理解しリターン(プロフィット)を獲りに行くのか、リスクが高いと考え投資を控えるのか、それらを考える判断基準としてメリットデメリットを考えていくものかと思います。

3-1).メリット、そして期待できるリターンとは?

フィリピンの不動産へ投資する大きなメリットの一つはやはり今、人口増大を武器に大きな成長曲線に乗ろうとしているフィリピン(新興国)の不動産へ投資することでその国の経済成長の恩恵をもろに受けることができる可能性を秘めていることです。具体的にはキャピタルゲインを得て大きな不動産売却益を得ることが挙げられます。
成長曲線にあることを考えれば投資は早いタイミングで行うに越したことはありません。また私たち日本人がフィリピンで不動産投資をするということは、同じ不動産という資産でもポートフォリオ上で不動産(日本)、不動産(フィリピン)というように同じ不動産でも資産の分散が行えていることになります。分散した資産ポートフォリオを形成することの重要性は語りつくされていますが、同じ不動産資産でも日本=円貨資産とフィリピン=ペソ貨資産を持つことでまた違う分散投資ができていることになります。
また不動産資産をもつことは、インカムが生じればその国の現地通貨を獲得することになります。これは資産形成上、実はものすごく重要なことで、外国人が他国の通貨を入手するには「為替変換」「現地で就労して対価を稼ぐ」以外には不動産を所有するしかないのです。これを筆者たちは外貨ポートフォリオの構築と呼んでいますが、よく詳しい解説は他の動画や記事で行っていきたいと思います。

3-2).デメリット、想定し得るリスクとは?

フィリピンの不動産へ投資するデメリットは上げ始めるともちろんいろいろあります。ですが共通していえることがあってそれは「不確定要素が多い」ということです。どういうことなのかと申しますと、例えば事前に説明を受けていたことと違うことが起こったり、あるいは180度真逆の結果が表れることもしばしばあります。1年後に完成する予定だったコンドミニアムが竣工が遅れた。しかもそれが1~2か月の単位ではなく1年近く遅れることはざらにあります。また日常のシーンでも多発しています。役所に書類を獲りに行ったら、いろんな部署をたらい回しにされた、なんてことはよく聞きますよね。不動産取引においても事前にどんなに入念にデューデリジェンス(DD)を行っても、いざ実際に手続きを行ってみると予想だにしない回答が行政や登記局から返ってきたなどあり、それらは先人がフィリピン不動産の失敗事例として多く記載が残されています。ですがひとえに不確定要素が多く、起こり得る事象を想像できなかったということが一番の問題なのでしょう。

4.本当に失敗談だったのか…?

筆者は特にフィリピン不動産投資において「失敗した」と思っていることはないので失敗談は無いですが、「直ぐに賃貸がつくと聞いていたのに空室が1年も続いた」とか「高値で売却できると聞いていたのに、実際には買った時よりも安く買いたたかれた」とかブログなどで体験談を語ってくれている先人の投資家の方々もたくさんいらっしゃいますよね。
デメリット(リスク)でもお話ししたように不確定要素=知らなかったことが多く、最終的にハッピーな投資の出口を迎えることができなかったということになります。ある種当然というかそれらの投資家の方々はそれだけ早い時期からフィリピン不動産に投資をしていて、ほとんど情報も現地でサポートしてくれる体制もない状況で投資を始めている状態だと思います。今でこそ不動産関連のサービスが増えてきましたが、私がフィリピン不動産と関わりを持つようになった7年前などは正直プレセールの販売業者さんくらいしかいない状況でした。当然情報も限定的だったわけです。逆に申しますとこれくらい早くから投資を始めている人の中には大きな利益を得た人々もたくさんいます。人は(特に日本人は)投資利益などで大きな成功を収めたとき、往々にして声を大にして触れ回ったりしないものです。ですがそういった先行者利益を獲得した方々は相当いらっしゃると思います。逆に失敗した(と感じられる)方々は後に投資される方のためにもご自身の貴重な体験を残していらっしゃるのでしょう。

5.リスクを回避し、リターンを最大化するためには?

不動産投資の失敗を回避する対策は何といっても投資を行うにあたって専門家のサポートを得ること。売買であればきちんと取引を理解した仲介人、不動産賃貸運営であれば管理会社など現地の不動産取引はもちろん税務や会計業務、そして商習慣や文化、言語といったことも含めて「フィリピン」に特化した人にサポートしてもらうのが一番です。その上で、最後に決断をすることは全て投資家が自己責任において投資判断を行うという認識を持つことも非常に重要だと思います。

6.専門家の目線から見る、投資すべきエリア

フィリピン不動産投資おススメのエリアはもちろんマニラ首都圏ですが中でもマカティ市のビジネスエリア(Central Business District:CBD)がコンドミニアム投資には最もよいエリアだと考えています(2021年2月時点)マカティCBD以外にも先進的な都市構想が人気のBGC(ボニファシオグローバルシティ)やマニラ湾沿いのカジノホテルエリア(ベイエリア)など人気エリアはいくつかありますが、筆者がマカティCBDを推す理由はエリアが既に完成されつつありこれ以上の拡張の余地が少なくなっているためです。新築の供給本数が減ってきているため賃貸需要の吸収が進みやすくなっていると思われます。もちろんそもそもビジネスエリアど真ん中のため、都心の一等地であり売買も賃貸も人気のエリアです。このエリアでの特選物件などは私のメルマガやLINE登録者のみにこっそり情報提供していますのでこの記事を読んで面白いと思っていただけたかはまず一度、ご登録ください。

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筆者:株式会社Assetters 代表取締役 江副元統(エゾエ モトツネ)

経歴

・広島大学医学部保健学科卒業、元理学療法士
・福岡市内の病院に勤務するも、漠然と業務にあたる日々に疑問を持ち2年半で退職
・「英語が喋られれば世の中、何とかなる」という思いで2013年からカナダへ語学留学
・いろいろな国、人種の人々交流を深める。渡航半年でTOEIC800点取得
・不動産販売会社に就職、フィリピン担当となり2014年からフィリピン現地在住
・不動産の竣工引き渡し件数、約1000室
・2017年~現地の不動産管理会社へヘッドハント
・2019年12月、フィリピン不動産投資の正しい普及活動を目的に株式会社Assetters設立
・日本国内でフィリピン不動産の周知活動に注力するため8年ぶりに帰国、日本に在住始める