June 25, 2024

フィリピン不動産|所有権の権利保全 登記簿はあるのか?

フィリピンにおける不動産登記簿の実態と重要性

 筆者はフィリピンに関わらず不動産における最重要ポイントは「物件の所有権」だと考えています。物件の所有権が主張できるから他の投資商品と比べて不動産は安定資産であり固定資産であり得るのです。投資の利回りやキャッシュフローを考える前にそもそも法的に所有権を主張することができるかということをデューデリジェンス(DD)せずに、投資判断もできないということです。逆にこのDDを怠って「フィリピンは成長している国だから」という感覚的なセンスで投資判断を行った人が結果的に失敗した、騙された(詐欺)という結論に至っているように感じます。何故、日本で不動産投資に慣れている投資家が、フィリピンやその他の国々に投資する際にそのような基本事項が抜けてしまうのかというと、ひとえに日本という国で日本人である以上、当然に所有権は取得できるものであり、そこに重要性を感じずに日本国内の投資を完結できることが多いためです。そのような投資家が海外での投資を考えるのは、より大きなリターンを得ることを考えたとき、必然的に成熟した日本のマーケットよりもフィリピンのような新興国に大きな成長の伸びしろを感じるためです。しかしハイリターンには必ずハイリスクは付きまといます。
 今回の記事では不動産投資をする前に、必ず理解しておかなければならない不動産の所有権がどのようになっているのかを解説します。所有権に関してはその他にもフィリピンにおける外国人であるが故の規制などもありますが、その辺りは外国人の土地保有に関しての記事などで解説します。

1.不動産登記簿はあるのか?

 まず結論から申し上げますと日本の法務局が発行している不動産登記簿に相当するものはフィリピンにもあります。CCT(Condominium Certificate of Title) というものがそれにあたります。不動産が土地などの場合はTCT(Transfer Certificate of Title)といいます。LRA(Land Registry Authorizty)という政府機関が土地や建物の登記を管理しており、さらにはその各地方自治体単位での管轄としてRD(Registry Deed:筆者は「登記局」と呼んでいます)があります。RDはLARAの各地への出先機関のようなイメージでよいかと思います。日本の不動産登記簿の場合はまず甲区にその物件の所有者や基本情報(住所や構造物)等の記載があり、そして乙区に抵当などの担保に関する情報の明記があります。各地の法務局に行けば誰でも取得可能で、不動産取引の透明性が維持されるため物件所有者やそれに関わる債権関連の情報が公開されています。それでも地面師などといった詐欺事件は発生することがあります。

 甲区、乙区といった名称ではないもののCCTにももちろん保有者と物件に関する情報が1ページ目にきて、2ページ目以降に抵当に関する記載が表記されます。コンドミニアムに関しては現金購入されているケースも多いので、抵当に関する記載がない=Clean Title(クリーンタイトル)といことになります。さらに、登記局に行けばこれらのCCTは閲覧も可能ですし、登記局発行の正規コピー(CTC:Certified True Copy)も取得可能です。CTCはCCTの原本(Original Copy)とは異なりますが、「原本と相違ない」ことを登記局が保証したコピーであり、その物件の所有者を確認するDDとしては十分な信頼性のあるドキュメントです。ここまで読んでもらって分かる通り、案外所有権に関して透明性のある管理もされていて、きちんと制度化されていると思いませんか?外国人の場合もコンドミニアムに限ってですがこのCCTはきちんと取得できます。不動産投資における規制は別途「外国人の土地保有」に関する記事をアップロードしますのでそちらに譲ります。動画もアップされています。

2.2〜3年かかるってホント?

 制度的には所有権取得が可能であることが明らかなフィリピンですが、実際の所有権取得の際には失敗例が溢れています。投資家によっては騙されたと考える方もいるようです。それはフィリピンではよく「CCTの取得には2〜3年かかる」と言われているためです。
これは外国人に限らず、現地のフィリピン人でもそのように思っています。筆者的には半分正解、半分は間違いといった感じです。具体的に解説していきましょう。

 CCTの発行に本当に2~3年もかかったら致命的ですよね。仮に事実だとしたら不動産の購入決済から所有権CCTが発行されるまでの間の2~3年は誰のものなの?ということになります。また「誰のもの?」が明確だとしても、結局法的論拠つまり所有権の提示ができないため物件の売却に大きな支障がでる、というよりも不可能に近いです。ですがこのCCT発行に2~3年かかる不動産には実は共通点があるのです。それは「新築物件」すなわち大手デベロッパーが分譲するプレセールコンドミニアムであることです。筆者はフィリピン不動産投資における様々な記事や解説動画を投稿していますが、一貫してプレセール販売に懐疑的であります。それは投資利回りや資産価値、安全性など挙げ始めるとときりがないですが、特にこの所有権の獲得において2~3年という購入者泣かせの謎の期間が生じてしまうことが大きな理由です。

 筆者の運営する会社では新築のプレセール物件の販売は行わず、現物の中古物件の売買のみ取り扱います。中古物件に関する記事は既にアップロードしていますのでぜひご参照いただきたいですが、簡単に申しますと売り主の所有権CCTを買主からの支払いと売買契約をもとに名義移転を行います。フィリピン流儀な話で恐縮ですが、RDや市役所、国税局といったCCTの名義移転に関わる関連役所の仕事ぶりには季節性があり閑散期(=普通)繁忙期(=時間かかる)年末などのホリデーシーズン前(=一切動かない)となりますので、名義移転にかかる期間が必ず一定とは言えませんが最短で3か月程度で購入者の名義に書き変わります。ちなみに3か月だって決して早いとは言えません。1日から長くても1週間では行ってほしいものです。ですが国によって役所関連機関やトランスアクションは成熟度やシステムの違いもあるので、一概に先進国と新興国を同列に比べることは不可能です。現状のフィリピンでは3か月~6か月程度で完了するのであれば合格点だろうというのが私の意見です。

参考動画:中古不動産の開設

 ではなぜデベロッパー、しかも大手の財閥が運営する国内でもトップ5に入るデベロッパーですら2~3年(長いときはもっと)手続きがかかってしまうのか…まず初めに断っておきますが、筆者はその具体的な理由は存じ上げません。理解できないという方が正しいかもしれません。なぜなら、実際にデベロッパーの内部に入り手続きの確認をしているわけでもなくまた当然ながら、デベロッパーに「何故CCTの手続きに2~3年もかけているのか?」と問いただしたところでまともに取り合ってもらえないからです。
 もちろん考慮しなければいけいないこともあり、例えば我々が仲介業者として取引を行った場合、もちろんCCTの手続き対象は1物件、多くても3~5室が同時に行われるといったところでしょう。一方で新築分譲のデベロッパーは一度に何百から何千もの物件を完成させ、CCTの登記移転が発生します。それを考えると「通常」よりは時間がかかるのは理解できる範疇です。ですが「通常」の2~5倍近くの時間をかけているのは明らかに異常です。販売した物件の所有権を何年も登記しないなんて、それこそ詐欺のような話です。そしてその明確な理由を外部の人間が知る由もないとなれば、これは端的にはデベロッパーが販売後怠慢しているからと言わざるを得ないと思いっています。
 実は一つだけ、デベロッパーに確認が取れたCCT遅れの理由を知っていますがこれは本当に驚きの理由を出してきました。驚きすぎてここでは記述できませんが、筆者のある大口顧客様が別の不動産業者から購入した新築物件で既に3年たってもCCTに取得にたどり着けず、日頃からお世話になっている方だったので他業者の販売物件であるものの、その業者も既にフィリピン事業から撤退していたこともありこちらの弁護士からのリーガルアクションも含めながら対応したケースでした。驚きの内容はメルマガ登録いただいた会員様にはいつか公開できたらなと思います。

3.不動産業者は理解していない?登記簿(CCT)発行の流れ

 売主であるデベロッパーの怠慢は許されざる行為ですが、このような行為が国全体的には容認されています。それは一般的に不動産投資=新築コンドの購入と思われているためで、更に言うとそれを斡旋している仲介業者や個人ブローカーなどが、この悪しき習慣が容認されていることをいいことに、デベロッパー側についている風習があります。販売して竣工後は所有権が速やかに購入者に移転されるべきなのに、デベロッパーをいくらせっついても効果は無し、そもそもデベロッパーのブローカー担当と実際のCCTの手配を行っているのは別部署だからという理由で、具体的な進捗具合(ステータス)を知ることも困難です。仲介業者としても購入者に説明しようにも、状況すらわからず「2~3年はかかるものですよ」とだけ説明して済ませてしまう訳なんですね。

 でもそもそも2~3年なんて言ってるブローカー自身が、CCTの手続きの流れすら知らないなんてことも少なからずあるようで、物件を売ったらせいぜいキャピタルゲイン税(CGT)の支払いがあるくらいしか理解していないことも多いようです。ちなみに新築プレセールを販売するデベロッパーの場合は物件の所有分類がOrdinary Asset(事業用途)と分類されるため、CGTではなくCreditable Withholdings Tax(CWT)の支払いになります。この手続き上の細かい分類などは別の機会に説明できればと思います。

 売った本人が手続きの流れも知らず、挙句、デベロッパーの怠慢も放任しているようだと買った購入者は苦労します。酷いケースだとプレセールを販売したのちに事業が立ち行かなくなり竣工前にフィリピン不動産業から撤退するところも少なくありません。以下に簡単なCapital Asset(事業用途ではない一般使用用途の不動産)の契約締結からCCT登記院展までの大まかな流れとタイムラインを記載します。タイムラインは前述の通り季節性もあるので目安です。

1)売買契約書Deed of Absolute Sales (DOAS)の締結と認証
2)物件所在地の管轄国税局(BIR)にてCGTと印紙税(DST)の支払い:1)の認証から30日以内
3)物件所在地の市役所(City hall)で譲渡税(Transfer tax)の支払い:1)から60日以内
4)Certificate Authorizing Registry (CAR)がBIRから発行、規定のタイムラインなし
 →BIRから発行ですが概ね1~2か月ほどかかります。
5)当該物件の管理組合からCertificate of Management (COM)を取得、タイムラインなし
 →こちらも管理組合によりまちまち。早ければ2週間程度
6)RDにて登録費用(Registration Fee)の支払い、売主名義のCCTを返還
7)購入者名義のCCT発行:6)から2週間から1か月程度

4.被害にあわないためにはどうすればいい?

 では、そんな「CCTが発行されない」さらに言えば「心理的負担を受ける」といった被害にあわないためにはそうすれば良いのか。単純ですが【プレセールを購入しないこと】これ以外ありません。CCTの発行に時間がかかるというリスクを負ってでも、新築プレセールにリターンを得る可能性があるのであれば良いといえます。ハイリスク=ハイリターン。CCTが2~3年手に入らないが、その間に膨大な賃料が確約されている、絶対的な稼働率が目に見えているなどですね。残念ながらそのような物件は筆者の経験上は皆無です。

 新築プレセールは往々にして竣工後も稼働が落ち着いてくるまでに1年程度の時間がかかるものです。それよりも既に稼働している物件、市場でも人気があって賃料も既に取れている物件、中古と言っても築2~10年といったところです。そして何よりも中古物件を購入することで、デベロッパー優位のトランスアクションに頭を悩ます必要は皆無です。それだけでもストレスフリーだと私は感じます。

参考動画:新築物件と賃料価格の推移

 プレセールを買うことのメリットは非常に少ない(記事「現物取引」をお読みください)。中古の現物不動産を選択するだけでCCTのトランザクションなどのリスクが激減します。プレセールを購入しないことでリスクを回避し、登記簿もあり、早期の投資利益も見込める現物取引(中古)で不動産投資を行うことが、被害に遭わずに『投資』の目的を達成する手段だと思っています。

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筆者:株式会社Assetters 代表取締役 江副元統(エゾエ モトツネ)

経歴

・広島大学医学部保健学科卒業、元理学療法士
・福岡市内の病院に勤務するも、漠然と業務にあたる日々に疑問を持ち2年半で退職
・「英語が喋られれば世の中何とかなる」という思いで2013年からカナダへ語学留学
・いろいろな国、人種の人々交流を深める。渡航半年でTOEIC800点取得
・不動産販売会社に就職、フィリピン担当となり2014年からフィリピン現地在住
・不動産の竣工引き渡し件数、約1000室
・2017年~現地の不動産管理会社へヘッドハント
・2019年12月、フィリピン不動産投資の正しい普及活動を目的に株式会社Assetters設立
・日本国内でフィリピン不動産の周知活動に注力するため8年ぶりに帰国、日本に在住始める

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