April 17, 2024

フィリピン不動産| 新築コンドミニアム”プレセール”とは?

〜目次〜

1.プレセール販売のスキーム

簡単に説明しますと分譲コンドのプロジェクトに対し、竣工の5年以上前から販売を行っていくスキームになります。これはデベロッパーには非常に大きな利点があり、それは竣工前から物件代金の回収が進んでいくことです。通常のように物件が竣工してから販売を行うようなケースですと、竣工するまでの間は建設資金をデベロッパーは自前で工面する必要があります。これを建設前から回収できるのは、莫大な資金が必要となる分譲プロジェクトにおいてデベロッパーに大きなメリットがあるのは明白です。日本でも青田売り呼ばれる手法でマンションデベロッパーは竣工前から予約販売など行いますが、日本の場合宅建法などに基づき一定の規制があります。

フィリピンの場合も開発許可を監督省庁のHLURBが発行しますが、竣工までには5年以上かかる物件の販売が許可されます。開発予定地は何もない更地の状態で、デベロッパーはショールームを始めとする販売素材を作成し見込み客への宣伝を行います。高度な技術で描かれたデザインパース(完成イメージ図)やピカピカの輸入家財で作り込まれたショールームは誰だって良いイメージを膨らませます。ですがこのようにして期待値が上昇したイメージで購入したものの、実際の竣工時には施工管理のずさんさや周辺環境の未整備などにより大きなギャップを生むケースがほとんどです。実際の例として、購入時は45階の超高層階で全面窓ガラスの都心部ど真ん中の物件を購入、予想では眼下に広がる高層ビル群を眺める最高のビューとなる物件を購入したはずが、竣工してみると何とも不細工に隣のビルの屋上がガラス窓の横に広がり、屋上設置のエアコン室外機を眺める最悪のビューとなってしまったものもありました。激怒した購入者は返金を求めて大問題となったことがあります(残念ながら建築上は問題なく返金は一切叶いませんでした…)。

プレセールの宣伝・販売方法はデベロッパーがショッピングモールなどで前述の作り込まれたイメージパースのフライヤリングやショールーム内覧がメインです。またその販売網は自社の営業マンからエージェント契約を結んだ個人・法人の仲介業者まで幅広くあります。また最大手の財閥系デベロッパーなどはわざわざ海外遠征まで設定し、近くは中国や日本、韓国、シンガポールなどの富裕層に対し販売会などを設定、すごいところは北米や欧州までも繰り返して、自社のフィリピン国内のコンドミニアムプロジェクトを売り込むのです。そこには莫大な宣伝広告費が費やされていることは容易に想像できますが、それを可能にするのも建設途中で売買代金の回収を行っていることが強みになっているでしょう。

2.支払い方法は多岐に渡る

それでもフライヤーを見て、セールスマンの話を聞いて「気に入った!!今日買うぞ…!!」となった時にはどうやって購入をするのか?実はプレセールの購入者には複数の支払いオプションが用意されています。ですがこれがまたプレセールは購入しやすいと勘違いさせる落とし穴なのです。

プレセールの支払いの方法はいろいろあって選べます。例えば、即一括支払いもできますし予約金5%を先に支払い、頭金20%は竣工までの5年間で分割支払い、残り75%は竣工後決済するといったような分割支払いなどがあります(以降、記事中ではこの5%、20%、75%をベースに話します)。特にこの「頭金は分割で」というのが落とし穴でデベロッパー宣伝文句では”Payments starts as low as PHP6,000 per month”などと言っています。つまり月々最低6000ペソ(約14000円)から分割で買える、みたいなニュアンスです。

特に毎月の支払いということは、月々所得のあるサラリーマンなどが購入しやすいように見えますが、実際には竣工までの約5年間で物件価格の25%程度払い込みが完成するということに他なりません。残りの75%は竣工したときに全部払えということです。ですが心情的に購入者はあと5年も残っている75%の支払いより、毎月たったの14000円程度で買える目の前のかっこいい(デザインパースの)高級コンドミニアムを前に「これなら投資できる(かも)…」と想像し始めます。

ところが筆者の経験上、5年後の竣工時のご自身の資金繰りを正確に予測できる購入者は皆無です。その結果、筆者の経験則では最終的に約50%もの購入者が竣工時の物件残高を清算できず、2足三文で売却、酷いときはこの5年間頑張って積み立てた頭金がすっかりそのまま溶けてしまう結果になるケースもあります。この75%の残金清算に関して、楽観視するべきでない2つの理由をお知らせします。

①デベロッパーがいう「銀行ローンがあるさ」
通常日本でもそうですが75%もの物件代金を現金で一括清算することは想定せず、ほとんどの人は銀行ローンを利用しますし、デベロッパーも購入契約の時「25%は竣工までの間分割、75%は竣工時にローンを使えばいいですよ」と言ってきます。ここで注意してほしいのは、デベロッパーセールスマンは何とか物件を売りたくて自分ではたいして良く知らない銀行ローンを持ち出してその場をしのぎたいだけということです。いくつかの例外的ケースもあるようですが、2021年4月現在、外国人がフィリピンの銀行で融資を受けれる可能性は限りなく低いです。

②消費者保護(Maceda Low)をあてにする
フィリピンにも消費者保護法があり、特にプレセールのような長期にわたって支払いを継続してきた消費者に対し、最終的に物件の取得が叶わなくなった場合に払込金額の返金を要求することができます(全額ではありません)。これは事実でMeceda lowが適用されたケースもあります。ですがフィリピンのような新興国において、消費者保護法があるという事実はさておき、それを実際に請求していくことは至難の業です。旧態依然の財閥組織に対し、いち購入者が一人で返還請求をしてもまともに取り合ってもらえない…残念ながらフィリピンはまだまだそのような気質が残っています。

3.投資的目線でプレセールを見る

ここまでデベロッパーがプレセールで売りたい理由や購入者の資金繰りリスクをお伝えしてきましたが、忘れてはいけないのは物件購入の目的は投資です。筆者がプレセールを圧倒的にお勧めしない理由も第1に投資的に難がありすぎるから、というよりもわざわざそのようまどろっこしい案件を買わなくても中古の現物市場にはもっとわかりやすくて良質な投資物件であふれています。中古不動産売買のススメも既に記事が出ていますのでそちらもぜひ読んでみてください。

新築プレセールを投資案件として全くお勧めしない最も大きな理由は「投資資金が休眠」することです。不動産投資を含む投資家は資金(現金)が常に”稼働”している状況を求めています。どういうことかと申しますと投資とは皆さんご存知のように、投じた資金が元手になりまさしく「お金がお金を生む」状態を作り出すことになります。不動産であれ株式であれ、それらが活動(不動産:家賃が入る 株式:企業価値が上昇する など)することで投じた資金に対しするリターンが発生します。時にはそれらの活動がマイナスに転じることもありますが、それが必ずしもネガティブな意味合いではありません。市場が下がっているときはある意味、投資のチャンスだからです。つまりここで申し上げたいのは、調子の良い時であれ下がっている時であれ資金を増やすために、投じた資金が活動している状況が必要なのです。

プレセールは前述の通り、竣工前から物件代金の支払いを行うことができます…この「できます」という表現は正しくなくて、本当はデベロッパーが販売代金を早々に回収したいだけです。もし私が購入者であれば「完成してもいないものにお金を払うことはできない」と思うわけです。完成する前の更地状態や建設中の鉄筋むき出しの構造物に資金を投じても、それらが活動し始めるのは5年以上後の竣工した後だからです。投じた資金は活動しません。いつまでも休眠状態です。はっきりと申しまして、そのような状態を許していては投資家とは言えません。

そんな無駄な期間を過ごすくらいなら、さっさと完成済の物件に投資して入居者を探したほうがよっぽど健全ですし、そもそも入居者のいる物件を購入することだってできるわけです。

その他にも竣工後の家賃収入と投資利回りを考えたときに、現在(2021年前半)のプレセール価格では薄利にもほどがあります。フィリピン不動産投資と利回りの水準に関してはより詳しく説明する記事を出したいと考えていますし、既に動画はプレセール利回りと賃貸価格、中古不動産利回りと賃貸価格の二パターンで投稿しているのでそちらもぜひご参照ください。

4.東南アジアで流通している新築コンドミニアムの販売手法

プレセールという新築コンドの販売手法ですがフィリピンのみならず東南アジアにおいて広く流通しています。マレーシアやベトナム、カンボジアなどもこのプレセールが主流のようです。国により規制や制度に多少の差はあると思いますが大きな概念の違いはありません。

つまりどの国においても先述のような投資的なリスクや購入時の資金繰りリスクは付きまとうものです。

5.メリットについて

プレセールを買うことのメリットは個人的な意見では「ない」と断言しています。竣工時の資金繰りリスクや投資資金の休眠という死活問題もですし、今回は詳細触れませんが不動産投資における最重要ポイント「所有権」に関する問題もあります。
参考記事:所有権の権利保全 登記簿はあるのか?

お勧めできるようなメリットはありませんが、あえていうならば前述したような積み立てでの支払いができるということです。特に実需で都心の高級タワーマンションに住みたいということであれば、頭金から分割できるというのはメリットです。ただやはり、5年かけて支払いをしながら竣工を待ってまで買う必要があるのかということがネックです。絶対おすすめの中古の現物不動産ならすぐ買えますし、それは投資でも実需でも同じだと思います。

ということで今回の記事ではフィリピンでコンドを購入する際に一般的となっているプレセールについて、その実態とリスクについて解説してみました。読んでいただいた方にはかなり非効率な購入の仕方だということがご理解いただけたと思います。

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筆者:株式会社Assetters 代表取締役 江副元統(エゾエ モトツネ)
経歴
・広島大学医学部保健学科卒業、元理学療法士
・福岡市内の病院に勤務するも、漠然と業務にあたる日々に疑問を持ち2年半で退職
・「英語が喋られれば世の中何とかなる」という思いで2013年からカナダへ語学留学
・いろいろな国、人種の人々交流を深める。渡航半年でTOEIC800点取得
・不動産販売会社に就職、フィリピン担当となり2014年からフィリピン現地在住
・不動産の竣工引き渡し件数、約1000室
・2017年~現地の不動産管理会社へヘッドハント
・2019年12月、フィリピン不動産投資の正しい普及活動を目的に株式会社Assetters設立
・日本国内でフィリピン不動産の周知活動に注力するため8年ぶりに帰国、日本に在住始める

 

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